ネットの口コミについての考察

ネットの口コミについては数年前のブログ(過去ログ倉庫にあります)にも書きましたが、その後も問題のある(悪意や作為のある)書き込みは増える一方である印象を持ちます。

大手検索サイトのYahooでは携帯番号を登録しなければコメント欄に投稿できない措置をとるようになりました。

医療関係においても本年4月には、医師63人がgoogleに対して140万円余りの損害賠償を求める集団訴訟を起こしています。なぜかというとgoogleは業種にかかわらず不適切な誹謗中傷や明らかな虚偽を含む口コミであっても、こちらの申請に(弁護士が作成した非常に詳細な理由を記した申請書であっても)全く誠意をもって対応することがないのです。

不適切な口コミを削除するにはgoogleに対する訴訟を地裁に起こすか(裁判では公序良俗に反する内容として削除が認められる可能性が高い)、開示請求を行って口コミを書き込んだ相手を特定してから訴訟を起こす以外に有効な手段がありません。

現実的には開示請求はかなりの時間を要し、たとえ名誉棄損で書き込んだ相手を訴えたところで得られる金額は微々たるもので、そのような攻撃的書き込みをする(つまり人格的に問題があるか世の中に不満を抱えていて書き込むことでその憂さ晴らしをしている)人間が相手であるとかえって逆恨みを買ってややこしい事態になる事も想定されるので、googleを相手取った訴訟という選択肢になります。

私たち医療業や小売・飲食・サービスなどのB to C(Business to Consumer)の業界では所見の場合ネット検索をする方が多く、ネットリテラシーのあまり高くない方はそこにある悪意で書き込まれた口コミを容易に信じてしまい、結果として営業的な打撃を被ってしまいます。

昔の2チャンネルに対する様々な訴訟を見てもわかる通り、何らかの不満を持った相手が匿名で何でも書き放題という状況に置かれると、その内容は事実のみならず虚偽や憎悪の感情を纏ってより過激になる事は容易に想定されます。

実際私のクリニックも非常に名誉を棄損されている書き込みに関して削除を求める訴えを起こしています。数年前にも競合する同業者からコンサルを通してあるサイトに虚偽の書き込みをされたことがあり、顧問弁護士に頼んで削除してもらった事がありました。

また架空のアカウントをいくつも作ってでたらめな書き込みを数回繰り返した後で、「御社の悪い書き込みを削除して良い書き込みを作ります」というダイレクトメールも定期的に届きます。もはや反社のビジネスにもなってしまっているのが現状なのです。

このように業績に影響をおよぼし、中小零細やスタートアップには場合によっては致命的な打撃を与える可能性があるにもかかわらず、書き込んだ者だけが「匿名性」で守られるといった不公平なサイト運営というものは再考の時期に来ているのではないかと思います。

さてここで話題を「医療機関に関する書き込み」と限定してさらに考察してみたいと思います。医療機関にはまさに様々な患者さんが来院されます。患者さんは疾患や症状の重軽だけでなく、年齢・性別・職業・居住地・経済状態・社会的地位といったわかりやすい指標に加えて、現在の生活に満足or不満とか、承認欲求が強い人orこだわらない人とか、治療内容を詳しく聞いて理解してから治療を受けたいor面倒な説明は不要なので早く治してほしいとか、もうあらゆる部分で異なるために医療者は診断・治療といった技術的側面よりもむしろ良好な対人関係の構築といった面でより緊張を強いられると言っても過言ではありません。

それら患者さん個々に適切な対応ができればお互いに気持ちよく診療行為が成立するのですが実際はそうは問屋が卸してくれません。説明不要と思って来院している患者さんに対して詳細な説明(特に医学的用語を用いて)を行うと「上から目線で偉そう」「知識がないと思ってバカにされた」という書き込みをされますし、承認欲求が強い患者さんに通常の対応をすると「冷たい」「患者さんに寄り添わない」という書き込みをされる可能性があります。

医者も普通の人間ですから患者さんとの相性の善し悪しというのは必ずありますし、私の場合はちょいと我儘な性格も災いして3割くらいの患者さんとはあまり相性がよろしくないのかなと自覚しています。中には商売と割り切って「揉み手に作り笑顔」の狡猾な医者も世の中にはたくさん居るのですが、自分の性格的に無理してまでそんな器用なことは気持ち悪くてできないので30年以上前からもうみんなに愛想の良い医者というは諦めてしまっています。しかしそのくせ患者さんとは出来る限り悪い口コミは書かれたくないという我儘を言うのはもう難しい時代なのかもしれません。

ネットリテラシーの高い方なら評判の良すぎるクリニックは要注意(外注で書き込み屋を雇っている可能性がある)とか、SNSにきらびやかな写真や高名な先生とのツーショット写真(こんなの若く綺麗な女医さんなら学会の懇親会場で喜んで撮らせて貰える)やお仲間同士がお互いのクリニックを紹介して褒めちぎっている(地域的に絶対競合しない)などを見ても騙されないと思うのですが、いかんせん選挙と一緒で一般大衆は政策でなく見た目や雰囲気(医者に置き換えると知識や技能ではなくホームページやSNSに書いてある薄っぺらいけど心地よい宣伝文句)に騙されてしまう事も少なからずあると思われます。

考えてみれば2000年を境に厚生労働省が患者さんを患者様と呼ぶように指導してから医療業界はおかしな事が起きるようになった印象を持ちます。確かに私たちより一回り上の団塊世代の医者には誰から見ても横柄で威張り腐った輩もいらしたので仕方なかったのかもしれません。それが今では厚生労働省がカスハラ防止のポスターを作製する時代にまで変化しました。患者さんの権利はもう十分に確立された世の中になっていると思っています。ですから事実を超えた必要以上の誹謗中傷を匿名で書き込む必要のある時代ではないということをぜひ理解していただけたらと思います。

とりとめのない話をまとまりなく書いてしまいましたが最後に・・・
医療はサービス業だと真顔で言う儲け上手な医者も居ますが私はその意見には断固反対の立場です。作り笑顔の愛想より患者さんの病気を診断治療する腕が優れていることがはるかに重要で、その腕を持ち合わせていない医者はサービス云々以前に医者失格と思います。ただしサービス業のようなへりくだった関係ではないにしても、人間対人間としての関係性において医者と患者さんは対等でないといけないと思っています。
ですから患者さんにお願いします、診察の際には最低限対等な立場の物言いをしてください。丁寧語なら丁寧語、敬語なら敬語を使ってお話をいたしましょう。そうすれば本日のテーマであるお互いに無益な行き違いはかなり減らすことができると考えています。

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