PCR検査について (2021-01-18)

PCR検査について

 今回の新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに突如感染症の検査として登場したPCR検査ですが、これまで臨床の現場で診断に使用された事はありません。PCR検査は唾液や鼻腔や口腔内に存在するウィルス遺伝子断片の特定部位を取り出して、それを倍々に増幅(サイクル数と呼ぶ)してサイクル数からウィルス量を推定する検査です。

 このサイクル数をCt値と呼びますが、問題なのは陽性と判定するCt値の設定いかんで結果がいかようにも調節されてしまう点にあります。Ct値を高く設定すれば微量のウィルス量(残骸や従来のコロナウイルスでも)陽性と判定されてしまいます。ところが実際に感染性を有する感染者のCt値はわかっていないのが現状なのです。

 Ct値には国際基準も存在しません。ですから各国基準値が異なります。日本より基準が低い国でPCR陰性だった人が、来日して陽性と判断されても当たり前な事なのです。日本ではCt値が40で陽性としていますが、台湾では35中国では37~40米国では40前後で運用されているようです。

 最近では自費で安価なPCR検査センターが東京を中心に出現し、地方でも郵送で検査を受けられるようになって検査数が大幅に増加しています。これらで陽性となった数は保健所に報告されますが、陰性者の検査数はカウントされません。これが陽性率を押し上げる原因となり、実効再生産数の計算も実際との乖離が生じてしまいます。

 以上のように今回突如導入されたPCR検査というものは、実際はまだ感染症の検査としては不確実性の高い存在であり、今後の臨床データの蓄積を経て陽性基準としてのCt値も見直されるものである、つまりPCR検査の信頼性はそれほど高くないという事は皆様も知っておかれた方がよろしいかと思います。

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