一般診療の病名と内容

高橋皮ふ科医院は皮膚科疾患全般にたる保険診療をおこなっております。
平成5年の開院以来、周辺地域の乳幼児から高齢者までたくさんの患者様においでいただいております。
当クリニックにおいて日常的に診療させていただいている疾患のなかで代表的なもの一部につきまして簡単に紹介および解説をさせていただきます。

一般診療の病名と内容

① ニキビ

ニキビの正式名称は「尋常性ざ瘡」脂腺毛包という皮脂腺がとても発達した毛包が詰まって皮脂が溜まることで発生し常在菌であるアクネ菌が増殖することにより炎症を起こします。炎症が長期間続くと毛包構造が破壊されてニキビ跡(ざ瘡瘢痕)を形成し醜形を残すので皮膚科専門医のもとで適切な治療を受けることが大切です。

思春期のニキビは第二次性徴期における性ホルモンの影響、女性の大人ニキビは月経前(黄体期)における性ホルモンの影響によって皮脂分泌が増加することにより発生しやすくなります。加えてストレス(精神的・肉体的)や不規則な生活リズムや偏った食生活や間違ったスキンケアなどいろいろな悪化因子が存在します。

治療は病状に応じて外用剤と内服薬を適宜組み合わせておこないます。外用剤には①抗生物質(クリンダマイシン・ナジフロキサシン・オゼノキサシン)②過酸化ベンゾイル③アダパレンがあり2種類を混合した合剤もあります。内服薬としては①抗生物質(ミノサイクリン・ドキシサイクリン・ロキシスロマイシン・ファロペネム)②漢方薬(十味敗毒湯・加味逍遙散・荊芥連𧄍湯・桂枝苓丸加薏苡仁など)③ビタミン剤(B2B6Cが中心)などがあります。症状に応じてこれらを組み合わせて治療をおこないます。


② アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは皮膚のバリア機能が障害された状態の過敏な肌質から生じる慢性的に痒みのある湿疹を繰り返す疾患でアトピー体質(家族歴や既往歴に喘息などのアレルギー性疾患を持つ)を伴うことが多いとされています。皮膚保湿因子の遺伝子異常が存在することが解明されており改めて幼少期からの保湿が重要であるとされています(幼少期から保湿剤を使用すると発症率が低下する報告があります)。

治療は保湿剤と炎症を抑えるステロイド外用剤およびタクロリムスの外用剤が従来からおこなわれてきましたが、新しく優秀な外用剤①JAK阻害剤②PDE4阻害剤③AhR調整薬などが承認され外来治療における選択肢がひろがりつつあります。外用剤に加えて湿疹の痒みや炎症を抑える抗ヒスタミン効果のある抗アレルギー薬の内服を併用するケースが多いです。またナローバンドUVBという特殊な紫外線療法も保険適応になっており当クリニックでは中等症以上の症例に対して積極的におこなっています。


③ 蕁麻疹

蕁麻疹は突然かゆみを伴う膨疹(虫刺みたいな紅色の膨らみ)が皮膚に出現して自然経過でも数時間で消失するといった症状を呈する疾患です。原因は食物や薬剤のアレルギーだけでなく(むしろ少ない)精神的肉体的ストレスや体調不良や過労や寒暖差など多岐にわたり特定できない場合もすくなくありません。

一過性の場合(数日でおさまる)と慢性化して長期間の治療を要する場合があり治療は原因物質のヒスタミンの遊離をブロックする抗アレルギー剤の内服が基本となります。 薬物治療に加えてできるだけストレスを軽減し体調を整えるために生活習慣の見直しが必要となる場合も少なくありません。


④ 脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は皮脂分泌の多い部位(頭皮や顔面や胸背部など)に紅斑や鱗屑(フケ)を生じる慢性炎症性皮膚疾患で、過剰に分泌された皮脂の酸化や常在菌であるマラセチア属真菌の増殖や皮膚バリア機能の低下や免疫反応の異常などが他因子的に関与するとされています。ストレスや睡眠不足や食生活の乱れなどは皮脂分泌の増加を招くため脂漏性皮膚炎の悪化因子と考えられています。

治療はマラセチア属真菌の増殖を抑える抗真菌薬(ケトコナゾール)外用が基本となり炎症が強い場合はステロイド外用薬の短期間外用が行われます。その他皮脂分泌を抑制する作用のある漢方薬や局所の炎症を抑える抗アレルギー剤の内服が必要に応じて併用されます。

皮脂分泌の量および分泌された皮脂の酸化されやすさには個人差があるため再発しやすい特徴があり、緩解状態の維持には症状軽快後も低刺激の洗浄とできるだけオイルフリーの化粧水等での十分な保湿と抗真菌薬を適宜間欠的に使用するなどの維持療法が必要となることが多いです。


⑤ 単純ヘルペス(口唇ヘルペス)

単純ヘルペス(口唇ヘルペス)は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染によって生じる疾患であり、初感染後ウイルスは三叉神経節に潜伏し、発熱・疲労・紫外線暴露・ストレスなどを契機に再活性化して口唇やその周囲に再発する疾患で、典型例では局所の違和感や灼熱感に続いて小水疱が集簇して出現しびらん・痂皮化して1週間程度で自然治癒します。

抗ウイルス薬(アシクロビルやバラシクロビル)の内服をなるべく早期に開始することで症状の軽減と治癒期間の短縮が得られ、予防には発症要因となる疲労・紫外線暴露・ストレスなどを避けるように心がけるなどの生活面での配慮が重要となります。


⑥ 単純ヘルペス(陰部ヘルペス)

陰部に生じる単純ヘルペスは単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)が多いが時に単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)も原因となる性感染症です。HSV-2感染の場合ウイルスは知覚神経節に潜伏しストレスや疲労などで免疫低下をきたした時に再活性化して再発を繰り返します(HSV-1の感染では初感染時のみ発症して再発はしない)。

初感染初発の時は外陰部や肛門周囲に疼痛を伴う水疱や潰瘍が多発して発熱やリンパ節腫脹を伴うなど比較的重篤な症状を呈するが再発時は症状が軽いことが多いです。

治療は抗ウイルス薬であるアシクロビルやバラシクロビルの内服によりウイルスの増殖を抑制し症状の軽減と治癒促進を図ります。重症例や頻回再発例では再発抑制療法が選択される場合もあります。感染予防策としてコンドームの適正使用や症状出現時には性行為を避けることがあげられます。


⑦ 帯状疱疹

帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因で起こる疾患で幼少期に水痘に感染した後に神経節に潜伏していたVZVウイルスが再活性化することで発症します。加齢やストレスによる免疫低下や各種基礎疾患による免疫低下が誘因となって当該神経支配領域に一致した片側性の疼痛と紅斑水疱を生じます。

治療は発症後できるだけ早期にバラシクロビルやアメナメビルなどの抗ウイルス薬を投与してウイルス増殖を抑制するとともに疼痛に対して鎮痛薬や神経障害性疼痛治療薬を併用します。重症例や免疫不全例では入院加療が必要となる場合もあり後遺症として帯状疱疹後神経痛を残すこともあるため早期診断治療が重要です。


⑧ 尋常性疣贅

尋常性疣贅はヒトパピローマウイルス(HPV)の皮膚感染によって生じる良性腫瘍で主に手指や足底などに好発します。微細な外傷部位からウイルスが侵入して表皮角化細胞内で増殖することで表面が角化した隆起性病変を形成し、接触により自己接種による病変多発化や他者への感染も起こります。

治療は液体窒素による凍結療法が第一選択であり病変を反復的に瞬間凍結させることでウイルスが感染した組織を破壊すると同時に炎症を惹起して局所免疫反応の誘導をはかります。外性器や肛門周囲の尖圭コンジローマではイミキモドクリームの外用療法も保険適応になっています。


⑨ 白癬症

白癬症は皮膚や爪毛に感染する真菌(皮膚糸状菌)による感染症で足白癬(水虫)や体部白癬(タムシ)などと呼ばれる病変を形成する。角質細胞層で増殖し鱗屑や紅斑ときにかゆみを伴う皮疹を形成する。高温多湿な環境や糖尿病など免疫低下が発症および増悪因子となります。

治療は基本的に外用抗真菌薬(イミダゾール系と非イミダゾール系がある)を用いますが市販薬の多くがイミダゾール系であるので市販薬にかぶれた既往がある場合には交差反応を避けるため非イミダゾール系の薬剤(例えばベンジルアミン系やアリルアミン系など)の使用が好ましいとされています。治療はある程度長期(症状消失後3カ月以上)継続したほうが再発を防ぐことができるとされています。爪白癬では内服抗真菌薬としてテルベナフィンやイトラコナゾールが使用されますが、近年ではルリコナゾールやエフィナコナゾールの外用もおこなわれるようになりつつあります。


⑩ 乳児湿疹

乳児湿疹は生後数週から数か月の乳児にみられる皮膚炎の総称で皮脂分泌の過剰や皮膚バリア機能の未熟さが発症に関与するとされています。全体的に脂性肌で顔面や頭皮に紅斑丘疹鱗屑がみられ乾燥や外的刺激で悪化することが多いです。多くは一過性で乳児期の皮脂分泌過剰な状況が改善すると軽快していきます。

治療は適切なスキンケアが基本であり清潔保持と保湿を徹底することで改善するが炎症が強い場合はマイルドクラスまでのステロイド外用薬を短期間使用します。痒みを抑えて掻破を予防することが重要になるので必要に応じて抗ヒスタミン効果のある抗アレルギー薬の内服を併用することもあります。


⑪ 老人性乾皮症

老人性乾皮症は加齢に伴う皮膚の環境変化である皮脂と汗の分泌低下や角質細胞間脂質(セラミド)減少によって皮膚の保湿機能が低下して乾燥落屑掻痒を生じる状態です。冬季の湿度低下環境や過度の入浴洗浄で悪化することが多く掻破によって容易に湿疹化してしまいます。

治療は保湿が基本で、ヘパリン類似物質や尿素製剤やワセリンなどの外用が用いられますが保湿力は市販されているセラミド主体のボディクリームの方が優れている場合も多いです。炎症や痒みが強い場合はステロイド外用薬や抗ヒスタミン効果のある抗アレルギー薬の内服を併用します。生活指導としては入浴後早期の保湿や過度な洗浄の回避や室内の加湿(特に冬季)などが重要であるとされています。


⑫ 円形脱毛症

円形脱毛症は自己免疫機序により毛包が障害されて成長期毛が急に脱落する疾患で主にTリンパ球が毛包を標的として攻撃することで発症しストレスや遺伝的素因が関与すると考えられています。臨床的には境界明瞭な円形または楕円形の脱毛斑を生じ重症例では全頭脱毛や全身脱毛に進行することもあります。

治療は重症度に応じて選択され軽症例では外用ステロイドや局所免疫療法やターゲット型エキシマランプの照射やステロイド局注などが行われます。進行例で全頭脱毛に移行するような広範囲例ではステロイド内服療法や免疫抑制剤が用いられ、近年はJAK阻害薬のバリシチニブの使用も高額ですが保険適応になっています。


⑬ 脂漏性角化症

脂漏性角化症は中年以降にみられる良性の表皮腫瘍で加齢や紫外線曝露が関与し表皮の角化細胞が増殖することで生じます。黒褐色隆起性の皮膚表面に貼り付いたような特徴的外観を呈し多発することもあります。

基本的に良性なので治療を行わない場合もありますが整容面の問題や痒み・出血・炎症がある場合は治療がおこなわれます。主な治療法として液体窒素による凍結療法があります。専門医であれば診断は比較的簡単ですがまれに悪性黒色腫など他の皮膚腫瘍と鑑別が難しい場合もあり、そのような場合は全摘出して病理組織学的に確定診断をおこないます。


⑭ 稗粒腫

皮膚の軽微な外傷の治癒過程で毛包や汗管を起源として生じる1mm程度の乳白色の丘疹でケラチン蛋白の塊を内包しています。自覚症状はなく自然消退することもありますが目元や鼻などに多発した場合には美容的な観点から治療をおこなう場合もあります。

治療は注射針やメスで小切開を加えて内容物を圧出する方法が一般的です。再発予防に外用レチノイドが有効な場合があります。


⑮ アクロコルドン

アクロコルドンは頸部・腋窩・鼠径部など摩擦を受けやすい部位に生じる良性の皮膚腫瘍で一般にはスキンタッグとも呼ばれます。加齢や肥満やインスリン抵抗性などが関与して表皮および真皮の軽度増殖により柔らかな有茎性小結節として出現します。自覚症状は乏しいですがネックレスや洋服の襟に引っかかるとかまたは美容的な見地から治療を希望されることも少なくありません。

治療は液体窒素による凍結療法が基本的におこなわれます。


⑯ 尋常性乾癬

尋常性乾癬は遺伝的素因に環境因子(外傷・感染・ストレスなど)が加わることで発症する慢性の炎症性角化症です。免疫異常によりT細胞が活性化しサイトカイン(特にIL-17・IL-23)の影響で表皮細胞の増殖が亢進し境界明瞭な紅斑と銀白色の鱗屑を伴う局面が出現します。

治療は重症度に応じて選択され軽症ではステロイド外用薬やビタミンD3外用薬やアプレミラスト内服や特殊な紫外線療法(ナローバンドUVB)が用いられます。難治な場合は内服薬(シクロスポリン・メトトレキサートなど)が用いられますが近年では生物学的製剤(抗IL-17抗体・抗IL-23抗体など)が導入され高い効果が期待されています。


⑰ 掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症は手掌と足底に無菌性小膿疱を繰り返し生じる慢性炎症性疾患です。喫煙・病巣感染(扁桃炎・歯周炎)・歯科金属アレルギーが誘因となることがあり角化異常や好中球主体の炎症が関与しています。膿疱は破れて痂皮や鱗屑を形成し再発を繰り返します。

治療は禁煙と病巣感染(扁桃炎・歯周炎)が存在すればその治療を行い、ステロイドや活性型ビタミンD3製剤の外用や特殊な紫外線療法(ナローバンドUVB)が治療に用いられます。難治な場合はビタミンA誘導体や免疫抑制薬の内服が用いられますが近年では生物学的製剤(抗IL-23抗体)が導入され高い効果が期待されています。


⑱ 梅毒

梅毒はTreponema pallidumによる性感染症で病期は1期~4期に分かれます。1期では3週間前後の潜伏期を経た後トレポネーマが侵入した局所(外陰部・口腔など)に硬性下疳と呼ばれる無痛性の結節と潰瘍を形成します。2期では感染から約3カ月後トレポネーマが全身拡散され丘疹性梅毒疹・梅毒性乾癬・梅毒性バラ疹・扁平コンジローマなどの多彩な皮疹や脱毛がみられます。3期では感染から約3年後に結節性梅毒疹やゴム腫を生じます。4期では大動脈炎・大動脈瘤・脊髄癆・進行麻痺など生命に係る症状があらわれます。

治療はペニシリン系抗生物質が第一選択でアモキシシリンを4週間内服します。ペニシリンアレルギーがあり服用できない場合はドキシサイクリンなどの代替薬を用います。数年前から1回の筋注だけで治療可能な注射薬も使用されています。治療後は血清反応を確認しながら経過観察を行いますが再感染(ピンポン感染)予防の見地からパートナーの検査・治療もきちんとおこなうことが重要です。

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