SNSと社会的分断についての考察

SNSというコミュニケーションツールが社会的な分断を助長しているという危険性が初めて指摘されたのは2008年オバマ大統領の選挙戦でした。民主党のオバマ陣営はSNSを駆使してライバルに大きな差をつけて勝利しました。

その後ある調査で面白い現象が明らかになります。民主党と共和党のそれぞれのブログコミュニティーのつながりを解析したところ、それぞれの中で完結しており両党の間でのコミュニケーションがほとんどなかったことが判明したのです。

SNSは同質性の高い集団でコミュニケーションを活性化させる一方で立場や意見が異なる者同士を排除する閉鎖性の強いツールであると指摘されるようになりエコーチェンバー現象と呼ばれるようになりました。これはある意見や主張が肯定され評価されながら集団内で繰り返される現象を指しあたかもこだまが鳴り響くかのように反響共鳴して集団内でより強力なものになることから命名されました。

その後の大統領選挙ではトランプ氏の過激なツイッター投稿が支持者たちの間でリツイートされエコーチェンバー現象により増大して大統領に就任しました。その後もSNSを利用して自らの支持者をより熱狂的なトランプ信者に仕立て上げ続けました。それは民主主義とは異なる主義主張が違う者同士の対立と敵対感情を煽って結果的にアメリカの分断をより深刻なものとしてしまいました。

その結末2021年1月6日に多くのトランプ支持者が選挙の不正を訴えてバイデンの大統領就任を阻止するために連邦議会を襲撃した事件が起きました。彼らの多くはトランプこそがアメリカや国民を救う救世主でバイデンなど民主党とその支持者は利権と権力のために不正を働く悪の集団であると信じていました。

この事件によりアメリカに深刻な社会的な分断が起きていることが明らかとなりました。同質性の高いコミュニケーションのみで完結して異質なものを排除するエコーチェンバー現象により自己正当化が行われて対立や分断が深まる・・・つまり他者の存在を意識・認識する過程が抜け落ちてしまったのです。そして自分たちと異なる立場の者に対する敵愾心や恐れや被害妄想が生まれて自己保身的に他者を排除し攻撃する排外主義が台頭しました。

同様な状況が日本で起きているかというと現状そこまでの深刻な分断は起きていませんが、同調圧力が強い国民性からエコーチェンバー現象が起きやすいとは考えられます。このエコチャンバー現象の厄介なところは確立されてしまった思考の修正のために異質な意見のコンテンツを織り交ぜるアルゴリズムの改修を行うと、より頑なに自分の考えを強める姿勢に傾いてしまうという点であり一種の洗脳のような状況に陥る点があげられます。

もうひとつSNSが社会的分断を引き起こす要因に社会関係資本(Social Capital)の希薄化が起きる点があると考えられます。社会関係資本とはコミュニティーや個人の環境改善のために協力しあう信頼や規範に基づくネットワークのことで、例えば休日に地域の清掃活動があったとしたら「面倒で本当は参加したくないけど近所の人達も参加しているし地域のためになるなら参加しておこう」というコミュニティー内の人間同士の信頼関係であり民主主義ではたいへん重要なものでありface to face な関係があることが大前提となります。

しかしSNS空間には物理的な人間がおらず人と人の信頼関係よりも自分の承認欲求を満たすことが最も重視される状態になりやすくそこに社会関係資本は形成されません。コロナ禍でリモートワークが推奨されたことも社会関係資本の喪失に拍車をかけてしまっています。

社会的分断が進行するのを防いで健全な民主主義社会を継続するために、時にはSNSから距離を置いて背景の異なる人達と直接交わる政治的でない場所を確保することが重要ではないかと考えます。

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