男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)

男性更年期障害とは?

病気ではないのに中高年男性の「なんとなく不調」や「突然のほてりや発汗」などは男性更年期かもしれません。女性特有と思われがちな更年期症状は実は男性にもありテストステロン低下が原因とされています。女性の更年期症状はエストロゲンが急激に減少する閉経前後に起こり閉経後は徐々に治まりますが、男性のテストステロン減少は中年以降穏やかに減少するため年齢的な幅も広く期間も長期に及びます。

テストステロン補充療法について

男性ホルモンであるテストステロンは20歳代をピークに年齢とともに低下します。テストステロンが低い状態になるとED等の性機能の低下だけでなく、活力が低下して抑鬱状態にもなります。加えて体脂肪の蓄積や心筋梗塞等の心血管イベントの可能性も増加することが知られています。

テストステロン低下によって起こる症状

1.やる気や活力の低下
2.睡眠障害
3.体脂肪の蓄積
4.性機能の低下・ED・性欲減衰
5.心臓やその周囲の血管のトラブル
6.骨密度の低下

ホルモン分泌量 男性と女性の更年期障害の違い
日本内分泌学会サイトより転載

テストステロン補充療法によって得られる効果

テストステロン値が低い方に補充療法を行い正常値に戻ることにより簡単に言うとホルモンがたくさんあった若いころの状態になります。
気分の落ち込みが減りやる気が出るなどの心理的効果に加えてED傾向がある方ではその症状が改善し筋肉量の増加もみられます。しかし現在のところテストステロン低下による心血管系イベントの増加や骨密度低下についてはテストステロン補充で改善がみられるというエビデンスはありません。

テストステロン補充療法ができない方

進行した前立腺肥大や前立腺癌と診断された方にはテストステロン補充療法を行うことができません(疾患進行の可能性があります)。 当クリニックでは放射線診断専門クリニックで事前にMRI検査をしていただき、PSAという前立腺癌の腫瘍マーカー検査も行い安全である事をしっかり確認した上で治療を開始します。 なおテストステロン補充療法が前立腺癌のリスクを上昇させることはありませんし、加えて睡眠時無呼吸症候群の悪化リスクとの関連も現在ではあまり関連はないという研究が現在主流となっています。

テストステロン補充療法の副作用

テストステロン補充療法の代表的な副作用としては、①肝機能障害②多血症③HDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少④ニキビ肌⑤多毛⑥女性化乳房などがあります。特に精巣機能低下による精子減少(男性不妊)は重要であり、今後子供を設けたいという若年男性にはこの治療はおこなえません。副作用についての詳細は治療前に担当医がしっかりと説明し治療を開始いたします。

(補足)

テストステロンは体内で一部アロマターゼという酵素によって女性ホルモンであるエストラジオールに変換されるため、テストステロン補充療法で変換された女性ホルモンの影響で女性化乳房や性欲低下が出現することがあります。この副作用はアロマターゼ阻害剤(アナストロゾール等)を併用すれば抑制できるのですが、通常は適切なテストステロン量のコントロールを行いながら治療すればそこまで問題となる副作用ではありません。

具体的な治療の流れと費用

1.問診票を記入していただき診察を受けて症状を評価します。

➡評価の結果男性更年期の疑いがない場合ここで終了となります。 3,300円(税込)

2.採血で遊離テストステロン値の測定と類似の症状を呈する甲状腺機能低下症を除外します。

➡遊離テストステロンが低値の場合は補充療法の準備として3.4に進みます。 15,400円(税込)

※1.2.を同日に済ませたい場合は採血を午前中に行う必要があるため11時診療開始時に来院ください。

3.前立腺腫瘍マーカーPSAの測定

➡PSAが正常であれば4へ進み、異常値であれば泌尿器科紹介となります。 6,600円(税込)

4.放射線診断専門クリニックに依頼し前立腺MRI検査による画像診断

➡天神にあるクリニックで画像診断を受けていただきます。 先方のクリニックでの費用
33,000円(税込)

5.1~2回/月のホルモン注射

➡遊離テストステロン値によって1回/2or4週の補充療法を行います。 5,500円(税込)

6.補充療法から4週後に遊離テストステロン値を測定

➡症状や数値の改善具合によって治療を継続するか経過観察を行うかを決めます。 8,800円(税込)

テストステロンについて

ED(勃起障害)とテストステロン

テストステロン減少による代表的な症状はED(勃起障害)です。ED決して稀な症状ではなく60歳代の60%以上にみられると言われています(当クリニックではED治療薬も処方しております)。

かつてはストレスが影響している(確かに若年者のEDはその傾向がみられます)とか糖尿病などの生活習慣病が原因とされていましたが、近年EDは血管障害として考えられています。

勃起のメカニズムは血管の機能と深く関係しており、動脈硬化などで血流が悪くなるとEDが起こりやすくなります。陰茎の動脈は非常に細く動脈硬化のごく初期に影響出るために「EDは最初に自覚可能な生活習慣病」とも言われています。

生活習慣病・自律神経障害とテストステロン

テストステロンの減少は男性更年期障害の症状だけではなく他の疾患リスクも高めます。
例えば筋肉量の低下や体脂肪の増加は代謝の悪化を生じるため糖尿病や高血圧など生活習慣病リスクを高めてしまいます。

さらにテストステロンの減少は自律神経の乱れを引き起こすため、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて倦怠感・集中力の低下・イライラ等の精神的な所見がみられる他、血行不良を招き血行不良に伴う動脈硬化や脳血管障害・心筋梗塞などの心血管イベントの増加リスクも懸念されます。

認知機能とテストステロン

テストステロンが減少すると認知機能の中でも特に空間認識力が低下します(空間認識力とは空間の中でモノの位置・大きさ・形状を認識する認知機能です)。テストステロンを補充することで軽度アルツハイマーや加齢性性腺機能低下症候群を伴う認知症において症状改善がみられたという研究報告があります。

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