財務省のホームページの記載によると、日本の普通国債残高は累増の一途をたどっており2025年度末には1,129兆円に上ると見込まれている。日本の債務残高はGDPの2倍を超えていて主要先進国の中で最も高い水準にあるとされています(図1)。

(図1)図1財務省ホームページより転載
財務省をはじめとする「財政破綻論者」は財政が破綻するプロセスを「このまま長期債務残高が積み上がると(国債の信用低下)金利が上昇し、利払い負担が財政を圧迫するので最終的に財政破綻が起きる」と説明していますがはたしてこれは本当に正しいのでしょうか?
実際は(図2)で示すように「長期債務残高が積み上がると、国債の金利は下がる」という正反対の現象が起きています。つまり「財政破綻論者」たちの理屈とは全く反対の現象がみられており、国債の金利変動は債務残高という要因では説明ができないと言えます。

(図2)図2 財務省「我が国の1970年度以降の長期債務残高の推移」統計表「金利情報」
国債の保有者は①日本銀行②民間金融機関③年金基金④一般投資家⑤海外投資家などが存在しますが、これらの中で国債の需要を創出できるのは唯一日本銀行です(図3)。
2023年までの日銀は月6兆円の国債を買い入れていましたが2024年からは5.9兆円→5.7兆円→5.3兆円と段階的に減額しています。このように需給を段階的に引き締めることにより10年物国債の金利を0.5%から1.6%に誘導しているのです(図4・5)。

(図3)図3日本銀行「資金循環統計」

(図4)図4財務省 統計表「金利情報」

(図5)図5日本銀行「オペレーション」財務省「金利情報」
この(図4)から明らかなように日銀が国債の買入額を調整することによる需給関係の変化が国債金利を左右するのであり、国債金利の上昇は長期債務残高とは無関係であると言えます。
現在日銀が保有している国債残高は全体の過半を占めています(図3)。つまり日銀の需給調整が国債市場に与える影響力は日銀以外の参加者が国債市場に与える影響力をかき消せるほどに強力となっており、国債金利は日銀の政策によって人為的にコントロールできる状態になっているのです。
日銀は毎月高い頻度で5兆円以上場合によっては20兆円超の国債購入資金を機動的に用意する必要がありますが、このキャッシュフローへの対応を可能にしているのが日銀の持つ通貨発行権です。この通貨発行権を行使することによって国債に関しては、植田総裁のように金利のある世界も黒田前総裁のように金利のない世界も演出可能となっています(図5)。
先日の参議院予算委員会で経済問題にいささか浅学菲才な石破総理が「金利のある世界は恐ろしい」と発言して問題になっていましたが、これには財務省をはじめとする「財政破綻論者」かつ「緊縮財政派」が唱える「国債金利は市場の変動によって決まり日銀はそれを制御できない」という考えが根底にあると推測されます。しかし日銀は国債の金利を周到に誘導する能力を持っているのです。
このような現状を共有していただいた上で、世界から日本政府が破綻すると認識される事態になったらどのようなことが起こるのかを、これから空想の世界でシミュレーションしてみたいと思います(為替は現在のレートを1ドル150円・外貨準備のレートを1ドル100円として計算しています)。
① まず日本政府が破産すると考えた投資家は日本国債と円(日本銀行券)の売り注文を出します。そして日本国債を売却して得られた円もドルに替えるドルの買い注文を出します。これが加速すると売り一色となって円は暴落します。
海外のファンド(投機筋)の間では日本国債や円を空売りしたり先物を売却する動きがみられ、売り注文の総額は発行済み国債残高を上回るような状況となります。
② そのような状況下で最後の買い手として政府と日銀が登場します。政府は外貨準備のドルを売って円を買い支える(2025年6月時点の日本の外貨準備高は1兆3140億ドルと最高水準に達しています) この潤沢な資金を用いて暴落している円を買い支えます。たぶんそのような状況下では1ドル300円以上で取引が成立するのではないかと想像されますのでここでは仮に500円としておきましょう。これによって市場には巨額のドルが供給され円が回収されて極端な円安ドル高となります。
③ 日銀は資金供給をしなければなりませんから、暴落した国債(この場合額面の2割程度で取引が成立すると思われる)を大量に購入します。
さてこの悪夢のような取引を終えた結果誰が一番得をしたのでしょうか?
まず国債を持っていた日本の投資家は額面の2割で投げ売りしたので大損をしています。
外国人投資家も666ドルを10万円に両替して額面10万円の国債を買っているのですから、それを2万円で処分してそれをたった133ドルに両替して市場から退散しました。
その瞬間に大喜びをしているのは海外の投機筋(ハゲタカファンド)でしょうか?しかし彼らこそ詰んでいます。買い戻す義務があるにもかかわらず買い戻さないといけない日本国債はすべて日銀が持っているので買戻しに要する金額は青天井です。
では日本政府はどうでしょうか?破産状態だからさぞかし悲惨なのでしょうか?政府は1ドル100円で買った外貨準備のドルを500円で売却して、日銀は額面10万円の国債を2万円で巨額に購入しています。
つまり政府と日銀の連結決算で考えると、外貨準備の半分である5000億ドルを使ったとすると、50兆円で買ったドルを250兆円で売り、その250兆円で額面1250兆円分の国債を購入しているわけです。つまり不思議なことに2025年時点の普通国債発行残高1129兆円がすべて消滅してしまい、今回の相場で唯一の勝者は意外なことに日本政府だったのでした。
政府と日銀はその後今回得た利益で即座に銀行を救済して金融市場の混乱(取付け騒ぎや貸し渋りや貸し剥がし)を防ぐ行動に出ます。バブル崩壊の時と同じように銀行に優先株を発行させてそれを買い取ることによって銀行の自己資本比率維持に努めると予想されます。
ということで結論ですが、政府が実際に破産しなかったのはどうしてなのでしょうか?・・・それは負債が円建てだったからです。
過去に政府が借金を返済できずに破産したケースは自国通貨以外(主にドル)を借りていた場合がほとんどです。政府が外国からドルを借りていると他国から一斉に返済を要請された場合、自国通貨で返済用のドルを買うたびに自国通貨安&ドル高が進むことによって返済不能に陥って破綻してしまいます。
日本は負債が自国通貨であり、加えて通貨発行も自由に行えることに加えて、世界第2位の外貨準備高もあるためにこのような結果となったのでした。

