緊急事態宣言について(あくまでも私見です) (2020-04-07)

 本日福岡県に新型コロナウイルスに関する「緊急事態宣言」が発令されました。みなさん不安な気持ちで受け止めていらっしゃる事と思います。「緊急事態宣言」でいったい何が変わるというのか?私もいろいろと疑問な部分もたくさんあります。専門外ではありますが現在私が個人的に思っている事を述べさせていただきたいと思います。

 政府は世論に押し切られる形で宣言を出しましたが、西欧諸国のような罰則規定のある「ロックダウン」とは全く異なり、自粛要請をより強く求めるだけのものです。在宅勤務が不可能な職業の労働者や、より弱い立場の非正規雇用の労働者は、宣言が出たとしても変わらすに混雑した公共交通機関を使って通勤をしなければなりません。いちばん避けなければいけない「3密」の移動する箱に詰め込まれて・・・。

 もちろん今まで自粛をしないで街に繰り出して騒いでいた輩には少しは圧力をかける事ができるかもしれませんが、良識ある大部分の人たちは既に自粛をしっかりと実行していたおかげで日本の新規感染者数は諸外国に比べてかなり抑制されていたわけです。これは決して検査数を絞ったからでない事は、その他肺炎等の類似疾患での死亡者数を見ても明らかではないかと思われます。

 感染者の80%程度は軽症あるいは無症候と言われていますので、現在の全員入院とするシステムを変更して、重篤な患者さんだけを選択して良質な医療を提供することができれば「医療崩壊」も日本では起きないのではと思われます。既にホテルを借り上げて軽症および無症候の患者さんを収容する準備もすすんでいると聞きますし、日本国民ひとりひとりのより一層の注意を呼びかければ宣言を出して対応しなくても十分ではなかったのではと個人的には思っています。

 ウイルス感染症というのは集団の多数が抗体を獲得するかワクチンが実用化されるかしない限り永遠に終息はありません。もちろん近い将来に変異株も出現するでしょうから治療薬の開発も必須です。現在おこなわれている自粛という名前の行動制限は感染者増加の速度を緩やかにする以外に得られるものはありません。

 現在マスコミ等で盛んにPCR検査をもっとした方がと言われていますが、現在おこなわれているPCR法の欠点は検査精度の問題の他にも、既にウイルスを排出しない状態までに治癒しているにもかかわらず残存しているウイルスの残骸に反応してしまい陽性と判定されて患者さんの退院を無駄に遅らせてしまうという欠点もあります。

 この問題を解決するためには早期にELISA法を用いたコロナウイルス抗体の定量検査ができるようにして、それをもとに正確で簡便な検査キットをインフルエンザのキットみたいな形で作ることです。残念ながら現在ある中国製の検査キットはまだ不正確なため、イギリス政府は購入済みの350万キットを使用できない状況にあると報道されています。

 IgM陰性・IgG陽性のウイルスに対して「無敵の人」を確定することができれば、その人にはどんどん社会活動を行い、自粛で傷んだ経済を回復させることをお願いできますし、医療の現場では防護服などの装備なしにバリバリ働いてもらう事が可能となります。急がなくてはならないのはPCR検査による患者の捕捉ではなく、その後をいかに早く復興させることができるかという事に尽きるのではないかと個人的には考えています。

 政府は「緊急事態宣言」とセットでGDPの20%にも及ぶ巨額な経済対策を行うと発表しています。しかしながら必要とする人に必要とされる援助が迅速に行われるかという点では少々不安な部分もあります。非正規雇用の労働者は突然の解雇と隣り合わせの状態で、正規雇用の労働者であっても、業種が自粛要請の対象である場合は、宣言がされなければ保証される労働基準法に基づいた「平均賃金の六割以上の休業手当」を「企業の自己都合」ではなくなるために保証されなくなり無給での自宅待機とされてしまいます。

 今回の宣言は自粛要請を受ける業界の労働者および個人事業主や中小零細企業への収入の保証とセットでないと困窮する人がたくさん生じてしまいます。現金給付の30万円はいわゆる平均的所得の労働者では受け取る事ができない仕組みになっています。税金未納者だけに給付してもその人たちが今後納税者として活躍できる可能性は高くありません。手厚く援助すべきは中流層や中小企業で、しっかり働いて納税している労働者と思います。その人たちの仕事がなくなり企業も倒産してしまえば納税する事さえ出来なくなり財政の悪化要因となってしまします。

 鳴り物入りで導入したマイナンバー制度がどうして今回のこのような事態に有効活用できないのか私としては不思議でなりません。国民全員の所得と納税状態が把握できている筈であれば、今回の宣言で自粛業種に指定されてしまい休業を余儀なくされている労働者や個人事業主のひとりひとりに「休業中は前年収入実績の例えば6割とか7割とかを保証しますのでどうか安心して自宅待機してくださいと」できないものなのでしょうか。支給対象者が不明確と感じられる現金給付案より数段優れた方法ではないかと個人的には思うのですが、このような議論が全く出てこない事が不思議でなりません。

 ただの町医者風情の私が専門外かつ生意気な事を言っていささか僭越なのですが、今は挙国一致でウイルスとの戦いを行う大切な局面にあると思います。ウイルスなどの病原体との戦いでは少なからず犠牲は伴いますが人類は必ず勝利する事は今までの歴史が証明してくれています。ですから大切なのはこの戦いに勝利した後、日本という国が再び不況に陥ることなく再生して、より一層発展する事ができるかという事に尽きると思います。

 現在の自粛要請に該当する産業を著しく疲弊破壊させてしまう事で、雇用の縮小が起きてしまい失業者が米国のように大幅に増加したり、第二の就職氷河期を生じさせて若い人たちを悲劇に陥れないための適切かつ賢明な政策が打たれる事を心から祈って筆を置きたいと思います。最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

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