コロナ騒動について今思う事(その4) (2020-06-02)

 緊急事態宣言解除の会見で安倍晋三首相は「まさに日本モデルの力を示したと思います」と誇らしげに宣言した事は皆様の記憶に新しいかと思いますが、そんな「日本モデル」について海外のメディアは「日本の奇跡」と懐疑的に報じています。

 ダイヤモンドプリンセス号の一件以来、日本の新型コロナ対策は諸外国に比べてかなりグダグダかつスピード感もないと国内のマスコミからも叩かれっぱなしでした。しかし、緊急事態宣言後にある程度優秀な成績を収めた後の論評は、現場の医療従事者の奮闘と「8割減」の外出自粛を律儀に守った国民が優秀であったに一変してしまっています。

 こうした報道に対して、日本人の衛生的な生活様式と粛々とルールを守る律儀さが機能した結果であると誇らしく感じる人も少なくないと思いますが、残念ながらそれは勘違いではないかと私は思っています。なぜなら新型コロナの重症患者が欧米と比べてケタ違いに少ないのは日本だけでなく東アジア諸国共通の現象だからです。

 5月31日現在の国別人口100万人当たりの死亡者数は、ベルギー816.85・スペイン580.20・イギリス566.97・フランス441.25・米国315.35・カナダ193.29と壮絶な数字が並ぶ欧米各国に対して、台湾0.29・タイ0.82・中国3.22・マレーシア3.55・インド3.74・シンガポール3.93・韓国5.29・インドネシア5.75・日本7.05と全く異なっており、東アジア諸国の中では日本は劣等生の部類に入るのです。

 この事実から推測されるのは、日本人の真面目で清潔好きといった国民性がコロナ対策に功を奏したわけでは決してないという事であります。当然ですが東アジア諸国とひとくくりにしても、文化も国民性も生活様式もまったく異なります。社会制度や医療体制やレベルに関しても差異は存在します。しかし「結果」はそれほど大きな差異がありません。欧米諸国と比べ重症患者が圧倒的に少ないという点では共通しているのです。

 このデータが示す事実は「東アジア諸国において新型コロナは重症化しにくい」ということであって、現時点では何故なのかは不明です。人種的・遺伝子的なものか、最近話題となったBCGワクチンなのか。ただ「国民性」や「医療従事者の努力」といった抽象的な理由でないことは確かなのではないかと思われます(誤解のないように断っておきますが、現場の医療スタッフは本当に頑張ったと思いますし、心から敬意を表します)。ですから安倍首相が話した「日本の感染症への対応は、世界において卓越した模範である」などということは根拠のない誠に日本人らしい御都合主義的な発言ではないかと私は感じています。

 この手のご都合主義的な発想が拡散共有されると次の「危機」が発生した時に悲惨な事態が生じないかと私は心配しています。「ルールを守る日本人」という概念が定着する事によって、第二波で事態が悪化した際に、外出や営業を自粛しない(できない)人たちへの非難や嫌がらせがエスカレートする事が容易に予想されます。精神主義の蔓延というものは、例えば戦争や災害などの社会不安が起きた際に誤った知識や強烈な思い込みによって集団リンチのような事態をもたらすことは第二次大戦中の日本の歴史が物語っています。

 幸いなことに新型コロナは日本では欧米のようには恐れなくてもよい事が既に判明しています。ここ数日の北九州市での第二波(私は第二波ではなくて無症候者まで調べた当然の結果と考えています)報道でも明らかになりつつあるように、市中には既に無症候感染者がうじゃうじゃ存在する状況であることも判明してきました。

 このような状況下であれば、医療が重症者に対応可能な一定の水準に患者数をコントロールしつつ(つまり無症候者までむやみやたらに検査せずに)、平常の社会生活を維持しながら、徐々に国民の抗体保有率を上げておきながら本当の第二波に備えるのが得策と考えます。

 新型コロナは東アジア地域においては、無理やりに抑え込まなくても良い感染症であり、むしろ上手に共存する事によって被害を最小限に止める事が大切であり、日本人の悪しき精神論から過度な自粛が強要されるような事態になるとかえって被害の拡大を招く可能性もあることを、あくまで私見としてお伝えしたいと思っています。

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