「厚生労働省は16日、東京都約2千人の抗体保有率を調査した結果、0.10%に陽性反応が確認されたと発表した。約3千人を調査した大阪府では0.17%、宮城県では0.03%で陽性反応があった。」この報道に正直「信じられない!」と感じた方々は医療関係者以外でもたくさんいらした事と思います。使用されたのはアボットとロシュの抗体検査であり感度100%・特異度99.8%なので検査制度的な問題はなく信用できる数値であると判断されます。
この結果と相反する事実として、慶應義塾大学病院が4月21日に公表した「新型コロナウイルス感染症に関する当院の状況について」という報告があります。同病院で4月13日から19日までに実施した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以外の治療を目的とした無症状患者の術前および入院前PCR検査で、7.46%(67人中5人)で陽性が確認されたとされています。
ここ数日の報道で、歌舞伎町のホストクラブ関係者で無症候のPCR陽性者がぞろぞろと検出されているという事実からも、感染者数は決して少なくないと考えられる事から0.10%という抗体陽性率に強い違和感を覚えます。
以上の事実を説明するためには新型コロナウイルスに感染して完治した患者が同じ抗体検査でどれくらいの割合で陽性と判定されるかを早急に確認する必要があります。感染したら抗体が産生されて一定期間の免疫を獲得するという単純なウイルスではないのかもしれませんし、欧米との抗体保有率の大きな乖離を考えると、アジア人特有の人種的な要因があることも予想されます。
もともと抗体検査というものは判断が難しい部分があります。例えば原始的な「自然免疫」の働きだけで、特異的なIgG抗体という「獲得免疫」の作用は必要とせずに感染しない個体というものが存在します。抗体検査が陰性であっても感染しないことは珍しくありません。家族に感染症が発症しても全員が罹患する訳ではないという事が例えとしてわかりやすいかもしれません。ですから抗体検査が陰性でも、感染しない個体は多数存在するのであって、抗体検査で陰性だから罹患していないイコール今後感染するという訳では決してないのです。
感染しても抗体が産生される確率が低い、あるいは抗体は産生されるがすぐに減少して検出されなくなるというようなウイルスであれば、抗体検査はあまり意味をなさないばかりでなく、今後開発されるであろう「ワクチン」の効果という点においても十分な免疫学的効果が得られないなどの大きな問題が生じる可能性が出てきます。もちろん日本人の持つ自然免疫の効果が十分に高ければあまり問題はないのですが・・・早急な解明が望まれるところです。
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