日本性感染症学会学術大会に参加してきました。 (2020-12-07)

 12月5日~6日に東京慈恵会医科大学西新橋キャンパスで開催された「日本性感染症学会第33回学術大会」に参加して参りました。今年はコロナの影響でほとんどの学会がリモート開催となって、今年初めての会場での参加となりました。

 もちろん厳重な感染予防対策の下で、参加者は300名限定で会場のキャパシティーの1/5程度に制限され、検温・消毒・健康調査票提出といった状況下での参加となりました。

 参加者である私自身としても、医療者として感染流行地である東京からウイルスを持ち込むことのないように、空港・宿泊するホテル・学会会場以外には立ち寄らずに、移動も全てタクシー利用といった行動制限は可能な限り徹底して出かけてまいりました。

 わざわざ会場まで出向いた理由は、リモート参加だと配信されないシンポジウムや教育講演の中に、是非参加したいセッションが含まれていたからです。リモートでオンデマンド配信は確かに便利ですが、ある程度の規模の学会になると全ての講演内容を編集して配信するのはまだ難しいというのが現状です。

 性感染症学会では診断治療やガイドラインに関する講演はもちろんですが、予防や啓発に関する講演も重要視されています。今回まずいちばん聴講したかった講演が「SNS時代の性教育のあり方」というシンポジウムでの岩室紳也先生のお話でした。今回のコロナ禍においてマスコミの偏向報道にそれぞれ自分勝手な解釈から大人でさえ右往左往している様子を引き合いに出して、入手した情報を他者と意見交換し相互理解を構築する事のできない今時の「コミュ障」は若者だけの問題ではないという話からはじまって、自分が思う「正解」を疑う事無く他人に強要する「マスク警察」に代表される「正解依存症」が性教育の分野のみならずあらゆるリスクコミュニケーションの障害となっている現状についてユーモアを交えてわかりやすく解説されていました。
 
 また10代の若年母に対する支援活動を長年行っていらっしゃって、Webサイトだけでなく最近ではICTを活用した支援プログラムも始められた小川久貴子先生の講演も、その熱意と行動力に感心しながら拝聴させていただきました。お二人ともネットで検索したらホームページやブログなどがすぐに見つけられる有名人なので興味がある方は是非覗いてみられたらと思います。

 あと北村邦夫先生と小堀善友先生の「性の未来」というシンポジウムでは、日本でのセックスレスの現状とVR(仮想現実)がもたらす弊害(特に男性側)と少子化問題など興味深い講演を拝聴できましたし、もちろん各種性感染症の最新のガイドライン(2020年版)についてのシンポジウムや、業者による郵送検査の適正化を担保するためのガイドラインについての教育講演など・・・内容が充実し過ぎていてまだ自分の中で整理しきれていません。今週と来週で一部講演はオンデマンド配信されていますのでぜひ復習したいと思っています。

 今年はコロナ禍によって様々な分野でオンライン化が飛躍的に普及して、自宅に居ながらにして会議会合に参加できるのが当たり前になりある意味便利になりましたし、この機会に可能なものはオンラインに移行して新しい時代に適応する事は大切だと思います。

 私も今年は数件の学会をオンライン参加してきましたので、移動不要でいつでも見たいものを選んで視聴できる(ライブ配信の場合はzoomによる質問すら可能)といった利便性は体験しています。しかしながら今年初めて実際の会場に出向いて参加する機会を得て思ったのは「現場に居る感覚はまた別物」という事でした。モニター越しに見る景色と現場のそれは明らかに異なるのです。

 オンラインの利便性は最大限活用しつつも、時々は自分の五感で感じる事ができる実際の空間に立って、face to faceで聞いて話す(時には議論する)という体験も欠かせない大切なものであることを再確認した週末となりました。

←新しい記事へ ↑一覧へ 以前の記事へ→

薬院高橋皮ふ科クリニック 福岡市中央区薬院1-5-11 薬院ヒルズビル2F 092-737-1881