3度目の「緊急事態宣言」を受けて (2021-04-22)

 首都圏・関西圏に3度目の緊急事態宣言が出され、福岡も感染者数の増加から近い将来同様の状況になりそうな感じですが、人流を抑制するという名目で過去にクラスターの発生事例がなく予防対策も十分と評価されているデパートやショッピングセンターにまで営業停止を要求する事に関しては多方面から異論が出ています。

 ここで1年前のダイヤモンド・プリンセス号の集団感染の現場で指揮を執った厚生労働省DMAT(災害派遣医療チーム)事務局の近藤久禎次長の非常に興味深い記事「コロナ死亡患者の4割が「元々寝たきり」の波紋」(東洋経済ONLINE)を見つけましたので紹介したいと思います。

 深刻な医療危機に直面していた札幌市にDMATが支援に入った期間(昨年11月8日~本年1月21日)のデータが紹介されているのですが、これによると病院や施設にいたコロナ患者は、患者数でみると札幌市内全体(1万0010人)の1割程度(985人)なのに、死者数でみると市内全体(223人)の76%(171人)を占めていたというものです。

 またクラスターが発生しその後亡くなった患者に限定して感染した場所を調査したところ、療養型病院47%・一般病院が29%・精神科病院7%・施設17%であり、療養型病院が半数を占めており、それらの病院で感染した死亡者のうち72%は「寝た切り状態」であったことが判明して期間中の札幌市内の全死亡者(223人)の45%に当たるというものです。

 つまりコロナ死亡患者の多くは元々の状態が悪いところに最後の死因がたまたまコロナだった死亡に当たるということで、通常の年でいえば肺炎やインフルエンザで亡くなったケースであることが判明したという衝撃的な事実であります。国のコロナ対策は高齢者施設に目が向いていますが、亡くなっている方の多くは療養型病院に入院している既に状態のよろしくない患者であることを指摘されていました。

 近藤氏は、「亡くなった方の属性とか背景にまで踏み込んで調べて分析しないで、感染症対策は打てない。もっといえば、病院・施設で亡くなる人を減らすのを最大の目標にするなら、市中の移動とか飲食とかをこれだけ制限するのは一定の相関はあるにしても議論が必要だと思う」と述べていらっしゃいます。

 以上を読んで理解した上で、コロナ死亡者の約9割に基礎疾患があり、しかも65歳以上が9割を占め80歳以上が6割90歳以上3割を占めるという実態(変異ウィルス出現前のデータなので今後変わるかもしれません)を冷静に考えたならば、例年であれば普通に扱われていた肺炎やインフルエンザで死亡していたものが「コロナ」で特別に扱われているだけである可能性が極めて高いという事に気が付くと思います。
 
 2020年6月18日に厚生労働省から出された事務連絡によって、速やかな報告のために新型コロナウイルス感染症の検査陽性者が入院中や療養中に亡くなった場合は厳密な死因を問わずコロナによる死に計上する事になりました。そのために実際の死亡者数と比べてきわめて過剰計上されている不合理な状態になってしまっています。自殺者をPCR検査して陽性であればコロナ死にカウントするとか、他の病気でもともと重症な方をPCR検査して陽性であればコロナ重症者としてカウントするとか、統計学的に極めて不適切なめちゃくちゃな処理が行われている事が以前から指摘されています。

 そもそもコロナ騒動の前は、高齢者施設や療養型病院などでインフルエンザの集団感染(クラスター)が起きて肺炎になっても高次医療機関に移送して救命治療などしてなかった訳であり、ここで現時点においても感染症の2類相当に留め置いたままでいる弊害が現れています。欧米諸国のような死亡者数であれば2類でいいと考えますが、幸いなことに日本はコロナによる死亡率・死亡者数もけた違いに少ないという事実を正しく反映させて現状では5類として、仮に変異したウィルスで欧米並みの状況が生じたら素早く2類に変更すればいいと思いますし、これは以前から私がブログに書かせていただいている持論です。

 日本では肺炎を原因として年間10万人超がお亡くなりになっています。もちろん肺炎の原因は感染症だけではありませんが、もし感染症の肺炎に対して今回のコロナ同様に全てPCR検査して濃厚接触者を割り出してなんて事をしてみたらどうなるでしょう?もう市中感染がいたるところで炙り出されて、その恐怖で全国民が自主的にロックダウンするのではないかなどと不謹慎ではありますが考えてしまいます。それくらいこの世界はもともとウィルスや細菌で溢れているのです。コロナより数段恐ろしいものもたくさん存在します。

 国民が一番知りたいのは純粋に基礎疾患がない健康な人が新型コロナウイルスに感染して肺炎を引き起こして死亡する症例はどれくらいあるのか?という部分だと思うのですが、全く情報が公開されていません。不安を煽るだけのメディアは完全な偏向報道であり、現状無意味どころかむしろ有害であると思います。また自粛を強いられたことによって職を失い経済苦に陥っている多くの人々が既に存在する事と、それが公務員以外の誰であっても自身に及ぶ可能性がある事を考えると経済の停滞は可能な限り避けたいところです。

 緊急事態にまん延防止、既に乱発して言葉遊びのような状況に陥っており、人々は「正常性バイアス」がかかってしまい、最初の緊急事態宣言のような効果はもはや望めないのではないかと思われます。「オオカミが来た」では最後に不幸な結末が待っているのですが、そうならないように日本政府にはまずワクチンの円滑な供給と接種体制の確立、将来的には国産ワクチンの早期承認と治療薬の開発援助を是非とも全力でおこなっていただき、今までの失策の挽回をはかっていただきたいと思います。
 

←新しい記事へ ↑一覧へ 以前の記事へ→

薬院高橋皮ふ科クリニック 福岡市中央区薬院1-5-11 薬院ヒルズビル2F 092-737-1881